少年法の厳罰化や少子化で、全国的に少年犯罪は減少傾向にあるにも関わらず、全国の再非行少年率は1997年から17年連続で上昇しています。平成27年犯罪白書によれば2014年は34.9%となり、統計を取り始めた1975年以来、最も高い数値となっています。再非行少年率の増加は愛知県内でも同じ傾向が見られ、犯罪の低年齢化や本人の問題だけでなく、保護者の養育態度、学校生活の不適応、いじめや貧困など、さまざまな問題が絡み合っています。

再非行防止を阻む重大な問題があります。出院後、「帰住先がない」「家庭に帰すことができない」「いったん家庭に戻るも不具合が発生する」など、再非行防止のための住環境を持てない少年の存在です。特に、児童養護施設や児童自立支援施設で暮らす少年が非行を行うと、その多くは出院後、施設に戻ることができず更生保護施設で暮らすことになります。愛知県には更生養護施設が一ヶ所しかなく、他県の施設にお願いする場合もあるのが現状です。

名古屋保護観察所から「戻る家庭がない」「家庭に戻すことはできない」と判断された少年には、自立の準備をするために約6ヶ月間の食事提供と宿泊費を無償で受けることができる国の制度があります。少年たちは「自立準備ホーム」という民間の施設で暮らしながら、就職先を見つけ、貯蓄をして自力でアパートを契約し、退所後の自立に向けて準備をする必要があります。しかしながら、(1)身近に相談できる大人がいない(2)社会と隔離されて生活していたため社会生活に適応できない(3)日常生活も容易ではない(4)幼少期の虐待や貧困、いじめが原因となる心の病であるなど、少年がひとりで自立に向けて準備するには困難が多々あります。保護者からの援助が受けられない少年たちが再非行することなく社会的に自立するには、彼らに寄り添い、支援する「親代わり」の役割を担い、社会的自立へいざなうための「個別包括支援」が必要です。

※刑法犯少年とは、刑法犯で警察に検挙された14歳以上20歳未満の少年。刑法犯少年の数に、交通事故に係る業務上過失致死傷罪、危険運転致死傷罪などは含まない。

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