名古屋市内には126人のろう児(生まれつき、もしくは言語習得前に耳が不自由になった子)がいます(※1)。そのうち、およそ115人は聴者(聞こえる人)から生まれます(※2)。ろう児の第一言語は「手話」、聞こえる親の第一言語は「日本語」であるため、ろう児家庭では親子間でもお互いに意思を伝えあうことが十分にできない状態にあると考えられます。実際にろう児が学校の連絡事項を親に説明しても、親が理解できず、親はろう児にくわしく聞くこともできないため、親子間でも通訳を介すことがあります。
このような環境にあるろう児家庭において、次の課題があると考えられます。

1.ろう児家庭への情報不足
ろう児の親の中には、子どもが生まれて初めて「ろう」と出会う場合もあり、手話を使えない親も多くいます。また、「ろう者」にとっては「手話」が大切な「言語」であるということを知らない人もいます。ろう児家庭への情報が足りないために、ろう児が言語を習得する機会が少なくなります。

2.共感能力への影響
幼少期における言語の習得(ろう児にとっては手話の習得)は重要です。言語習得の機会が少ないことにより、言語発達が遅れ、共感能力の発達に影響を与えます。共感能力が低いと周囲への配慮に欠け、自分勝手だと思われるなど、他者とのコミュニケーションに支障が出てしまいます。大人になり自立した社会生活を送る上で、ろう児が他者とのコミュニケーションに大きなストレスを抱える恐れがあります。
 
愛知県にはろう学校が5校あり、名古屋市内には名古屋ろう学校と千種ろう学校の2校があります。そのうち千種ろう学校では、PTAが親向けに年3回程度の手話教室を開催していますが、他に行政支援などでろう児の親が「ろう」や「手話」を学ぶ機会はありません。ろう児が家庭内で自分の気持ちを伝えることができる家庭環境を整えることが重要です。

※1:名古屋市から1級~3級の聴覚障害児・障害者手帳の発行を受けている0~14歳の子どもの数。
※2:千種ろう学校に通う、ろう児家庭83組のうち、聴者の親76人の割合(91.6%)を名古屋市の0歳~14歳までのろう児126人へ掛け合わせ推計。

この課題に取り組んでいる団体