視覚障がい者就労の現状は、「あんま」「はり」「灸」「マッサージ」が主流となっています。視覚障がい者全体の職業別就職率では53.6%、「生産工程」「労務」の職業が12.9%、「事務的職業」が12.6%。重度の視覚障がい者(障がい者手帳1級、2級)では、「あんま」「はり」「灸」「マッサージ」が69.2%、「生産工程」「労務」が6.2%、「事務的職業」が9.0%となっています(2009年度厚生労働省)。
この数字は、当事者が望んでいる数字なのでしょうか。ハローワークでの障がい者に対する求人において、勤務先が愛知県内の事務的職業は104件(2015年3月時点)で、勤務先に視覚障がい者を受け入れる体制があるか否かは、個別対応に頼らざるを得ません。ハローワークの担当者が視覚障がい者へヒアリングし、職業能力を確認した上で、求人先へ問い合わせるという手順でマッチングが進められています。しかし、ハローワークの担当者によるヒアリングだけでは、視覚障がい者の職業能力を正しく判断することができず、名古屋市総合リハビリセンターの視覚支援を利用した訓練や実習をするなど、段階的に就職活動をすることを勧めているのが現状です。同センターにおいて、過去25年間の中で就職に結びついた利用者は2人(いずれも軽度視覚障がい者)のみであり、特に重度視覚障がい者が置かれている事務職採用状況は非常に厳しいと言えます。以前勤めていた職場への復職を除き、重度視覚障がい者の事務職の就労事例はなく、表面化していないため、環境改善や担当業務の具体例が希薄であることも起因しています。
この裏側には何が潜んでいるのでしょうか。「あいちの課題深堀りファンド」2014年度助成事業(※)で調査した結果、視覚障がい者の就労の問題が、当事者・企業の双方から見つかりました。
(1)当事者の抱える問題
・受傷によるメンタルの低下
・移動の不安
・障がい特性の不理解
・万全ではない支援体制(ヒト・モノ)
(2)企業が抱える問題
・通勤の安全性
・職場環境の整備
・支援や環境改善にかかるコスト
・「見えない=何もできない」という思い込み
以上から、「視覚障がい者が働く姿をイメージできない」という課題が見えてきました。これを払拭するためには、視覚障がい者が企業との接点を持つこと、当事者の能力を発信すること、障がい特性への理解を推進し続けていくことが必要と考えます。
※愛知の視覚障がい者の職業実態調査事業 http://aichi-community.jp/posts/9399
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