肢体不自由児の特別支援学校に通う重度の障がい児は、見たり、聞いたり、考えたりすることは健常児と変わらなくても、食事やトイレ、入浴をはじめ、生活の多くを人の手を借りて生きています。卒業後も、自宅や施設で受身の生活をすることがほとんどです。だからといって、何もしたくないと思っているわけではありません。自分ひとりでは指一本思うように動かすことができないために、大人になるにしたがって多くのことをあきらめていくのです。さらに、育児書にも載っていない、難しい子育ての現場にいきなり放りこまれた親や周りの人は、見た目の障がいの重さのために、彼らの可能性を過小評価しがちです。

2005年に愛知県心身障害者コロニーが名古屋市を除く愛知県内の「地域で生活する重症心身障害者」を対象に行ったアンケートによると、1,131名の対象者の内、回答した605件の日中活動の場は29.3%が「学校」、33.2%が「施設」、35.5%が「家」でした。回答者の99.5%が家族で、本人が直接回答できたのは0.2%だったというほど障害の重いグループで、平日の日中を過ごす場を選ぶ基準に「働く・就労」などを選んだ人は4.9%でした。コンピューターの恩恵にあずかる昨今では、彼らの可能性はとても大きなものとなり、名古屋市には「わだちコンピューターハウス」「やまびこ福祉会」「エゼル福祉会」など、重度の障がい児にもパソコンなどで仕事をするための支援をする施設があります。稲沢市西部にも働くことや就労に関心のある重度障がい児が前述の調査と同じ割合でいると考えられますが、重度障がい児の就労支援施設やパソコン教室はありません。

障がい児の可能性を広げるのはパソコンだけではありません。高機能のコンピューターミシンは、障がいの重い子どもにも、とても使いやすい道具です。特別支援学校でも作業(手芸)や家庭科の授業でさまざまな種類のミシンを使っています。しかし、高機能の刺繍コンピューターミシンを改造したり、道具を工夫したりして作品を作ってきた重度障がい児には、卒業後それを生かす場所がありません。

この課題に取り組んでいる団体