社会全体を身体に例えてみると、社会の課題は病気やけがのようなものと考えることができます。さまざまな疾患に医者や薬があるのと同様に、複雑な社会では課題に直面した場合に、解決するためのさまざまな手段が必要です。そして、いち早く不調に気づいて応急処置をするには、大病院だけでなくかかりつけ医や家庭医療などが欠かせないのと同じように、災害救助や障がい者支援といった緊急で重要な専門性のある課題だけでなく、地域ネットワークや住みやすさにつながる社会貢献活動が、成熟した社会には必要です。

ところが、社会貢献活動の両軸を成す「ボランティア」と「寄付」に関するデータを見てみると、ボランティアや寄付をしていない人が多数派であることがわかります。

『国民生活選好度調査』
(内閣府 2012年)より

これは全国調査ですが、愛知県でも同じ傾向にあると推定されます。愛知県では、過去1年間に「ボランティア活動」を行った人の行動者率(= 行動者数÷10 歳以上人口×100(%))は、全国平均 (26.3%)を下回る23.1%となっており、全都道府県中44 番目(ワースト4)となっています。そして、この行動者率は残念ながら過去10 年間、後退傾向が続いています。(愛知県「社会生活基本調査結果」2011年より)

なかでも、地域ネットワークの初歩ともいえる「自治会」や「子ども会」については、特に震災以降、地域の安全や市民活動としてニーズが高まっています。ところが、名古屋市内での自治会や子ども会への加入率は、年々減少傾向にあるのが現状です。名古屋市内の子ども会加入率は、2006年度の42.6%から2012年度には36.0%まで減少しています。

真に魅力的な成熟社会になるためには、地域ネットワークの充実で社会の異変に臨機応変な対応ができるようにするだけでなく、社会貢献への教育啓蒙活動が必要です。もちろん、そうした活動はこれまでも行われてきましたが、地域ネットワークに参画する「はじめの一歩」を気軽に踏み出せ、ハードルを下げるような入門プログラムは、今まで本格的に研究されてこなかったのではないでしょうか。協働することで笑顔が生まれ、それを見ることで自らも満足する体験ができる。そのような視点の教育プログラムが今後、研究開発されていくことが不可欠です。

この課題に取り組んでいる団体