名古屋市では2008年のリーマンショック以降、生活保護世帯が増加しており、それに伴い生活保護世帯における子どもの数も増加しています。また、中学生の高校進学率は名古屋市全生徒98.1%に対し、生活保護世帯では86.8%にとどまっています。

生活困窮家庭では子どもの養育に困難をきたし、子どもは日常生活が不規則になる、十分な栄養がとれない、認められた経験が足りない、親の都合で学校へ行けない、虐待を受けているなど、守られるべき子どもの権利が侵害された環境の中で生活しています。このような状況の中で、自分の存在価値や「自分は社会や集団の中で役に立っている」「自分の存在は価値あるもの」と受け止める自己有用感を喪失し、自信が持てず、自分のことを大切な存在だと思えません。ひいては自分も他人も信用することができず、「自分はどうせダメだから」「できなくて当たり前」と、何か新しいことを始める前からあきらめてしまっている子どもが多くいます。

こうした不安定で不利なさまざまな条件を背負う中で、不登校や高校中退、暴力や非行、犯罪、10代の妊娠など、複数の問題を繰り返し、将来の希望や夢を描けないまま、貧困の世代間連鎖に巻き込まれてしまうことがあります。その状況を断ち切るためには、子どもたちが安心できる居場所を提供し、目標や意欲を持って生きていける環境を整える必要があります。

名古屋市では2013年度より市内3区にて「名古屋市生活保護世帯の子どもの学習サポートモデル事業」をスタートしました。主に中学3年生を対象としていますが、緑区では1、2年生も受け入れています。しかし、2014年度は7月から事業を開始する予定のため、4~6月の3か月間はサポートがいったん途切れてしまい、身についてきた学習習慣が持続できません。また、新たな受け入れでは、困難な環境の中でゆらぐ子どもたちの気持ちを受けとめられず、関係性をつくっていくにしても、学習でのつまずきを取り戻すにしても、時間が足りないまま受験準備を始めなくてはならないため、不利な状況が生じています。これまで築いてきた信頼関係をつないでいくためには、公的支援のない4~6月にも継続的な学習サポートが必要です。

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