精神障害者はすでにがん患者の2倍を超え、2011年に厚生労働省は「精神疾患」を「五大疾病」の一つと位置づけました。代表的な疾病であるうつ病においては、子どもから高齢者まで約15人に1人が生涯のうちに経験すると考えられています。育児の問題、学校でのいじめ、ひきこもり、過酷な労働環境による過労死、自殺、孤独死や老々介護など、さまざまな社会問題と精神疾患は相互に関係しており、自分自身のみならず周りの家族、同僚が精神疾患にいつ罹るかわからない状況です。精神疾患を一度抱えると、それまでの生活から一変して職業選択の自由はおろか、生活のために仕事に就くことすら困難になります。

名古屋市では、精神障害者が10年間で約10,000人増加し、13年3月末現在で約17,000人となっています。障害者の雇用を促進するために、06年から現在に至るまで50を超える障害者の就労支援施設が立ち上がりました。しかし、12年度の報告では、施設の支援により一般就労につながった精神障害者は年換算でわずか25人、1年間で「700人に1人」しか就職できていない状況にあります。

そこには、精神障害は「見た目にはわかりづらい」という特徴から健康な状態と同等の労働力を要求してしまう労務提供側の問題(社会の壁)と、「障害者は仕事を選べる立場にない」と考えてしまう本人の思い込みの問題(障害者本人の壁)があります。この2つの壁が、結果的に「低賃金」で「やりがいの感じられない、単調な仕事」といったものを障害者の仕事と位置付けてしまう構図をつくり上げ、悪循環を引き起こしています。

この悪循環を断ち切るためには、就職させることだけに視点を置いた訓練ではなく、社会の中で仕事を通して人と互いに助け合える場面を増やすことで、2つの壁を乗り越えていく新しい就労訓練のプログラムを確立していく必要があります。

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